「年金は早くもらった方がいいのか、それとも遅らせた方がいいのか」——これは老後の生活設計において、多くの人が頭を悩ませる問題です。公的年金の受給開始年齢は65歳が基準ですが、実は60歳から75歳までの間で自由に選択できます。60歳から受け取れば年金額は最大24%減額され、75歳まで遅らせれば最大84%増額されます。
「早くもらって損した」「遅らせすぎて受け取る前に亡くなった」——どちらも後悔につながります。この記事では、繰上げ・繰下げ受給の仕組みから損益分岐点のシミュレーション、そして見落としがちな税金・社会保険料の落とし穴まで徹底解説します。さらに、年金だけに頼らない老後の備え方も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
年金の繰上げ・繰下げ受給とは?基本の仕組み
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、原則として65歳から受け取りを開始します。しかし、この受給開始年齢は希望に応じて変更することができます。65歳より前に受け取り始めることを「繰上げ受給」、65歳より後に遅らせることを「繰下げ受給」と呼びます。
繰上げ受給:60歳から受け取れるが減額される
繰上げ受給は60歳0カ月から64歳11カ月の間で選択できます。受給を早めると、1カ月あたり0.4%ずつ年金額が減額されます。この減額率は2022年4月の法改正で従来の0.5%から引き下げられました。
60歳ちょうどから受け取った場合の減額率は以下の通りです。
| 受給開始年齢 | 繰上げ月数 | 減額率 |
|---|---|---|
| 60歳0カ月 | 60カ月 | -24.0% |
| 61歳0カ月 | 48カ月 | -19.2% |
| 62歳0カ月 | 36カ月 | -14.4% |
| 63歳0カ月 | 24カ月 | -9.6% |
| 64歳0カ月 | 12カ月 | -4.8% |
重要なのは、この減額は一生続くという点です。一度繰上げ受給を選択すると、取り消すことはできません。
繰下げ受給:最大84%増額の威力
繰下げ受給は66歳0カ月から75歳0カ月の間で選択できます。受給を遅らせると、1カ月あたり0.7%ずつ年金額が増額されます。2022年4月の法改正により、繰下げの上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました。
| 受給開始年齢 | 繰下げ月数 | 増額率 |
|---|---|---|
| 66歳0カ月 | 12カ月 | +8.4% |
| 67歳0カ月 | 24カ月 | +16.8% |
| 68歳0カ月 | 36カ月 | +25.2% |
| 70歳0カ月 | 60カ月 | +42.0% |
| 75歳0カ月 | 120カ月 | +84.0% |
例えば、65歳時点で月額15万円の年金を受け取れる人が75歳まで繰り下げると、月額27万6,000円(15万円×1.84)になります。年間では180万円が331万円に増える計算です。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げ可能
あまり知られていませんが、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げすることができます。例えば「老齢基礎年金は65歳から受け取り、老齢厚生年金だけ70歳まで繰り下げる」という選択も可能です。繰上げ受給の場合は両方同時に請求する必要がありますが、繰下げは柔軟に対応できます。





