東京23区だけで、50代の病死・自然死は年間1,027人——。これは同年の交通事故死132人(東京都全体)の約8倍にあたる数字です。「昨日まで元気だったのに」「まさかあの人が」。そんな突然の訃報を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

しかし、医学的に見ると「突然死」の多くは、実は予兆を放置した結果であることがわかっています。本記事では、40代以降に急増する突然死の実態と、見逃してはいけない「静かなサイン」について解説します。健康診断で異常を指摘されながら放置している方は、ぜひ最後までお読みください。

突然死の7割は「心臓」が原因

突然死とは、「それまで通常の生活を営んでいた健康に見えた人が、24時間以内に死亡すること」を指します。日本では年間9〜10万人が突然死で命を落としています。

突然死の原因を見ると、約7割が心臓に起因しています。心臓以外では、脳出血やくも膜下出血などの脳血管疾患、大動脈解離などが続きます。

原因 割合
心臓(心筋梗塞・不整脈など) 約70%
脳(脳出血・くも膜下出血など) 約15%
大動脈解離など 約10%
その他 約5%

心臓が原因の突然死で最も多いのは心筋梗塞です。心筋梗塞は発症すると約3割が突然死に至るとされており、まさに命に直結する病気です。

40代・50代男性が最もリスクが高い

突然死は、働き盛りの世代に多いという特徴があります。特に40代〜50代の中高年に集中しており、男性は女性の約2倍のリスクがあります。

過去5年間の労災認定データを見ると、脳・心臓疾患による過労死は年代別で40代・50代が最多。性別では男性が96%を占めています。

突然死が起こりやすい状況

時期 週末、冬場に多い
時間帯 深夜〜未明
場所 睡眠中(20%)、入浴中(5%)、用便中(5%)

勤務中に突然死する確率は2割弱で、実は8割以上が勤務外——つまり自宅で倒れるケースが大半を占めます。「職場では元気だったのに」という話をよく聞くのは、こうした背景があるからです。

「突然死」でも予兆があった人が多い

「突然死」という言葉から、前触れなく突然倒れるイメージを持つかもしれません。しかし、実際には多くの人が何らかの予兆を経験していることがわかっています。

心筋梗塞の場合、発症した人の約半数は1〜2ヶ月以内に胸痛や圧迫感を経験しています。発症1〜2週間前に5分程度の胸の症状を起こすこともあります。

脳梗塞の場合も、「一過性脳虚血発作(TIA)」という前兆が現れることがあります。TIAを経験した人の15〜20%が90日以内に脳梗塞を発症し、その半数はわずか2日以内に発症しています。

問題は、これらの予兆が「一時的なもの」「たいしたことない」と放置されてしまうことです。症状が数分〜数十分で消えてしまうため、「治った」と思い込んで受診しない人が多いのです。

心房細動——4割は無症状のまま進行

特に注意が必要なのが心房細動という不整脈です。心房細動がある人は、脳梗塞のリスクが健常者の5倍に跳ね上がります。

しかも厄介なことに、心房細動で自覚症状があるのは全体の6割程度。残り4割は無症状のまま進行します。症状がないからといって安心はできません。無症状でも脳梗塞になるリスクは同じなのです。

脳梗塞の約30%は心房細動が原因であり、心房細動による脳梗塞(心原性脳塞栓症)は重症化しやすいことが知られています。入院患者の約半数が寝たきり、または歩行に介助が必要な状態になるというデータもあります。