心筋梗塞の「静かなサイン」を見逃すな

心筋梗塞の前兆として最も知られているのは胸の痛みですが、実は心臓とは関係なさそうな場所に痛みが出ることがあります。これを「放散痛」といいます。

心筋梗塞で痛くなる意外な場所

放散痛とは、心臓から離れた場所に現れる痛みのことです。心臓の近くに左肩や腕に流れる神経が集まっているため、心筋梗塞の痛みが肩や腕に「放散」してしまうのです。

痛みの場所 特徴
左肩・左腕 最も多い放散痛の部位
歯・顎 歯科で異常なしと言われたら要注意
喉の違和感、締め付け感
みぞおち 胃の痛みと間違われやすい

循環器専門医の間では「口からへそまでの症状は心筋梗塞の可能性を考える」という格言があります。胸だけでなく、このエリアの異常は心臓の問題かもしれないと意識しておくことが大切です。

こんな症状があったら要注意

心筋梗塞の前兆として、以下の症状に注意してください。

・胸全体が締め付けられる感覚
・「象に踏まれたような」圧迫感
20分以上続く胸痛
・冷や汗、吐き気
・息切れ

特に、冷や汗を伴う場合は危険信号です。心筋梗塞を起こすと自律神経のバランスが崩れ、冷や汗や吐き気が生じます。高齢者や糖尿病の方は胸痛を感じない「無症候性心筋虚血」の場合もあるため、さらに注意が必要です。

脳梗塞の前兆「一過性脳虚血発作」

脳梗塞の前兆として最も重要なのが「一過性脳虚血発作(TIA)」です。これは脳卒中の前触れ発作とも呼ばれ、短時間で症状が消えてしまうのが特徴です。

TIAの症状

TIAでは、脳梗塞と同じような症状が一時的に現れます。

片側の手足のしびれ・脱力感
・ろれつが回らない
・言葉が出てこない
・片側の口が垂れる
・箸が持てなくなる
・めまい、吐き気
・ものが二重に見える

これらの症状は通常1時間以内、多くは数分〜30分程度で消失します。そのため「ちょっと調子が悪かっただけ」「疲れているのかな」と放置してしまう人が多いのです。

TIAを放置すると48時間以内が危険

TIAを経験した人の15〜20%が90日以内に脳梗塞を発症し、その半数はわずか2日以内に発症します。つまり、TIAは「治った」のではなく、脳梗塞に移行しやすい危険な状態なのです。

一方で、TIA発症後すぐに治療を受けた場合、90日以内の大きな脳梗塞発症率が80%軽減したというデータもあります。早期発見・早期治療がいかに重要かがわかります。

足の冷え・しびれは動脈硬化のサイン

突然死の原因となる心筋梗塞や脳梗塞の根本にあるのは動脈硬化です。そして動脈硬化は、足にサインが現れることがあります。

閉塞性動脈硬化症の4段階

足の動脈が硬くなり血流が悪くなる「閉塞性動脈硬化症」は、以下の4段階で進行します。

段階 症状
Ⅰ度(初期) 足先の冷え・軽いしびれ
Ⅱ度 一定距離を歩くとふくらはぎが痛む(間欠性跛行)
Ⅲ度 じっとしていても足が痛い(安静時疼痛)
Ⅳ度 潰瘍・壊死(最悪の場合、切断)

初期段階の「足の冷え」「しびれ」は、単なる冷え性や筋肉痛と思われて見過ごされがちです。しかし、これは血管が狭くなり血流が悪化しているサイン。放置すると最悪の場合、足の切断に至ることもあります。

また、爪の伸びが遅くなったり、足の皮膚が乾燥したりするのも、血流低下のサインです。日本では60歳以上の1〜3%、70歳以上の2〜5%がこの病気を持っているとされています。

いびきは突然死のサインかもしれない

家族から「いびきがうるさい」と言われたことはありませんか。実は、いびきは睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインである可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。重症になると1時間に数十回、1回あたり数十秒以上も呼吸が止まることがあります。

放置すると死亡リスクが跳ね上がる

研究によると、睡眠時無呼吸症候群の人は健康な人に比べて夜間の突然死リスクが2.6倍高いとされています。また、重症のSASになると8年後の生存率は6割という報告もあります。

放置すると心筋梗塞・脳梗塞のリスクが3〜4倍に上昇。居眠り運転による交通事故のリスクも7倍になります。

家族やパートナーからいびきや無呼吸を指摘されたら、恥ずかしがらずに一度病院を受診してください。早期に治療を行えば、これらのリスクを健康な人と同程度まで抑えることができます。