健診異常を放置する人の実態

ここまで突然死の予兆について解説してきましたが、実際に「異常」を指摘されても放置している人は少なくありません。

4人に1人が再検査を受けていない

会社員1,000名を対象にした調査によると、健康診断の結果「要再検査」「要受診」となった人は33.5%——約3人に1人は何らかの健康課題を抱えていました。

問題は、この「要再検査」「要受診」となった人のうち、約26%が検査を受けていないということです。つまり、4人に1人以上が異常を放置しているのです。

放置する理由トップ3

なぜ再検査を受けないのでしょうか。調査結果は以下のとおりです。

順位 理由 割合
1位 仕事が忙しかった 37.9%
1位 必要性を感じなかった 37.9%
3位 面倒だった 26.4%
4位 どこで受ければいいかわからなかった 19.5%

「仕事が忙しい」「必要性を感じない」が同率1位。「特に症状があるわけでもないし」「寝不足だから大したことない」「自分で生活習慣を変えれば問題ない」——こうした自己判断で放置している人が多いのです。

また、「病気が見つかるのが怖い」という心理的な理由で受診を避ける人もいます。しかし、発見が遅れるほど治療は難しくなり、取り返しがつかなくなるリスクが高まります。

男性特有の「受診しない」傾向

突然死のリスクが女性の2倍である男性には、特有の問題があります。

自覚症状があっても受診しない
無理をしがちな行動傾向
・喫煙・飲酒・高ストレスの生活習慣

「まだ大丈夫」「病院に行くほどじゃない」という考えが、発見の遅れにつながっています。過労死の労災認定で男性が96%を占めているのも、こうした傾向と無関係ではありません。

生活習慣病を放置した結末

健康診断で指摘される高血圧、脂質異常症、糖尿病——これらの生活習慣病を放置すると、どうなるのでしょうか。

高血圧を放置すると

常に高い血圧が続くと、血管には絶えず大きな負担がかかり続けます。やがて動脈硬化が進行し、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞のリスクが上昇します。高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるほど自覚症状が乏しいのが特徴。気づかないうちに血管を傷つけ続けるのです。

脂質異常症を放置すると

悪玉コレステロールや中性脂肪が多い状態が続くと、血管の内側にプラーク(粥状硬化)が蓄積されます。数年〜数十年かけて血管が傷つき、脳梗塞・心筋梗塞のリスクが上昇します。

糖尿病を放置すると

血糖値のコントロールが不十分だと、神経障害、腎不全、失明といった深刻な合併症のリスクが高まります。さらに、糖尿病の人は胸痛を感じない「無症候性心筋虚血」を起こしやすく、心筋梗塞の発見が遅れる傾向があります。

一過性脳虚血発作を放置すると

前述のTIA(一過性脳虚血発作)を放置した場合、10〜15%が90日以内に脳梗塞を発症します。特に危険なのは発症後48時間以内です。

しかし、TIA発症後すぐに治療を開始すれば、90日以内の脳梗塞発症率を80%も軽減できることがわかっています。「症状が消えたから大丈夫」ではなく、すぐに専門医を受診することが命を守る行動なのです。

心房細動を放置すると

心房細動を放置すると、発作の回数が次第に増えて慢性化していきます。患者さん自身は症状に慣れて「またか」程度にしか感じなくなりますが、回数が増えるほど血栓ができる危険性も高まります。

また、心房細動は「隠れ脳梗塞」と呼ばれる小さな脳梗塞の原因になり、認知機能の低下につながることもわかっています。心房細動がある人は、ない人に比べて認知症に1.4倍なりやすいという報告もあります。