なぜメモリが足りない?高騰を招いた3つの原因
メモリ価格の急騰には、明確な原因があります。結論から言えば、AIブームによる需要爆発が最大の要因です。具体的には、以下の3つの構造的な問題が重なっています。
原因1:AIデータセンター建設ラッシュ
ChatGPTに代表される生成AIの急速な普及により、世界中でAI向けデータセンターの建設が加速しています。OpenAI、Google、Microsoft、Amazonといったテック大手は、AI開発に必要な計算能力を確保するため、巨額の設備投資を行っています。
特に注目すべきは、OpenAIがメモリ大手のサムスン電子やSKハイニックスと締結した大型供給契約です。一説には、OpenAIが世界のシリコンウェハー(半導体の原材料)の40%を確保しようとしているとも報じられています。
こうした巨大IT企業による「メモリの買い占め」ともいえる動きが、市場全体の需給バランスを大きく崩しています。
原因2:HBM(高帯域幅メモリ)への生産シフト
メモリメーカーは、利益率の高いAI向け製品に生産をシフトしています。その代表格がHBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)です。
HBMは、NVIDIAのGPU(画像処理半導体)などAI用チップに搭載される特殊なメモリで、従来のDDR5と比べて10〜100倍のデータ転送速度を誇ります。当然ながら、販売価格も通常のメモリより大幅に高く、メーカーにとっては非常に利益率の高い製品です。
SKハイニックスやサムスン電子といった大手メーカーは、このHBMの増産に経営資源を集中。その結果、一般消費者向けのDDR5メモリやNAND型フラッシュメモリの生産が後回しにされ、供給不足が深刻化しています。
業界関係者によれば、PC向けDDR5メモリは現在「作れば売れる状態」であり、一部カテゴリでは月間80〜100%もの価格上昇を記録しているといいます。
原因3:Micronが個人向け事業から撤退
2025年12月3日、米半導体大手のMicron Technology(マイクロン・テクノロジー)が衝撃的な発表を行いました。個人向けメモリ・ストレージ事業からの撤退です。
マイクロンは世界第3位のメモリメーカーであり、その撤退発表は市場に大きな動揺をもたらしました。同社はAI向けのHBM事業に経営資源を集中する方針を明確にしており、これにより個人向けメモリ市場の供給はさらに逼迫することが予想されます。
世界のメモリ市場は、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンの3社で約95%のシェアを占める寡占状態にあります。そのうちの1社が個人向け市場から撤退するインパクトは計り知れません。
HBMとは?AI時代の主役メモリを解説
ここで、メモリ高騰の鍵を握る「HBM」について、もう少し詳しく解説しておきましょう。投資判断をする上でも、この技術を理解しておくことは重要です。
HBMの基本:積み重ねて高速化する技術
HBM(High Bandwidth Memory)は、複数のDRAMチップを垂直に積み重ね、高速な接続技術でつなぎ合わせた特殊なメモリです。従来のメモリが平面的に配置されるのに対し、HBMは「立体的」に構成されることで、小さなスペースで大容量・高速転送を実現しています。
具体的な性能を数字で見ると、最新のHBM4は最大2TB/s(テラバイト毎秒)という驚異的なデータ転送速度を誇ります。これは、1秒間に2,000GBものデータをやり取りできる計算です。一般的なPC用メモリ(DDR5)の転送速度が50〜60GB/s程度であることを考えると、その差は歴然です。
なぜAIにHBMが必要なのか
生成AIの学習や推論(AIが回答を生成するプロセス)には、膨大なデータを超高速で処理する必要があります。NVIDIAのGPUがAI処理の「頭脳」だとすれば、HBMはその「短期記憶」の役割を担っています。
いくらGPUの処理能力が高くても、メモリとのデータのやり取りがボトルネックになれば、全体の性能は上がりません。そのため、AI向けの高性能チップには、HBMの搭載が事実上の標準となっています。
急拡大するHBM市場
HBM市場の成長は目覚ましいものがあります。市場規模を見ると、2022年には約10億ドル(約1,500億円)程度だった市場が、2025年には約50億ドル(約7,500億円)と5倍に拡大。さらに、モルガン・スタンレーの予測では2027年に330億ドル、ゴールドマン・サックスは2026年に230億ドル規模に達すると見込んでいます。
市場調査会社IDTechExのレポートによれば、HBMの販売台数は2035年までに2024年の15倍に増加する見通しです。まさに「成長市場」の代名詞といえるでしょう。
| 年 | HBM市場規模 | 備考 |
|---|---|---|
| 2022年 | 約10億ドル | — |
| 2025年 | 約50億ドル | 3年で5倍 |
| 2026年 | 230億ドル | ゴールドマン・サックス予測 |
| 2027年 | 330億ドル | モルガン・スタンレー予測 |
次のページでは、メモリ価格の今後の見通しと、投資家が注目すべき関連銘柄を紹介します。





