PC値上げ最大30%、販売停止も続出

マウスコンピューター「買うなら今」の悲鳴

PC価格高騰の深刻さを象徴するのが、国内BTOパソコンメーカー大手・マウスコンピューターの動きです。同社が公式SNSで発した「悲鳴」は、業界関係者にも大きな衝撃を与えました。

異例の「購入を急げ」メッセージ

マウスコンピューターは2025年12月11日、公式X(旧Twitter)に以下のような投稿を行いました。

「悪いことは言いません、なるべくお早目の購入をオススメします!!本当に!! 買うなら今です……!!」

メーカーが「今すぐ買え」と呼びかけること自体が異例ですが、その背景には深刻な事情がありました。

一部製品の販売停止・出荷遅延が発生

12月16日、マウスコンピューターは正式に販売状況に関する発表を行いました。

発表によれば、「現在、想定を大きく上回る受注の増加により、工場のひっ迫・パーツ不足が発生し、一部製品に販売停止ならびに出荷納期遅延が発生する見込み」とのことです。

つまり、値上げ前の駆け込み需要が殺到した結果、生産が追いつかなくなったのです。これは「買うなら今」という呼びかけが裏目に出た形ともいえますが、それだけ消費者の危機感が高まっていることの証左でもあります。

2026年1月から価格改定を実施

あわせて同社は、2026年1月以降に順次価格改定を実施する予定であることも発表しました。具体的な値上げ幅は明らかにされていませんが、メモリやSSDの高騰を考慮すると、相当な上昇幅になることが予想されます。

マウスコンピューター新宿店によれば、少なくとも年内いっぱいは仕入れ済みの在庫がある限り価格据え置きで販売するとのこと。ただし、年明け早々には、特に以下のような製品が入手困難になる可能性が高いと警告しています。

  • 手ごろ感のある低価格ノートPC
  • 大容量メモリを必要とするゲーマー向けPC
  • クリエイター向けの高性能PC

BTOメーカー・サイコムも受注停止

マウスコンピューターだけではありません。BTOパソコンメーカーのサイコムも、12月16日に受注停止を発表しました。

サイコムはカスタマイズ性の高さで知られる老舗BTOメーカーですが、パーツの調達難により注文を受けられない状況に陥っています。

「想定を上回る注文」の悲鳴続出

業界全体を見渡すと、「想定を上回る注文が殺到している」という報告が相次いでいます。これは単純に需要が増えたわけではなく、値上げ前の駆け込み需要が一気に押し寄せた結果です。

皮肉なことに、「値上がりするから早く買った方がいい」という報道が広まるほど、駆け込み需要が加速し、在庫不足と価格高騰がさらに進むという悪循環が生まれています。

世界PC大手3社の対応詳細

改めて、世界シェアトップ3のDell、Lenovo、HPの対応を詳しく見ていきましょう。

Dell:「かつてない速度」でコスト上昇

Dellは2025年12月17日から値上げを実施しました。同社COO(最高執行責任者)のジェフ・クラーク氏は「これほど急激なコスト上昇は前例がない」とコメントしています。

特に深刻なのは、メモリ搭載量が多いモデルほど値上げ幅が大きくなることです。

メモリ容量 値上げ幅(ドル) 日本円換算
32GB 130〜230ドル 約2万〜3.5万円
64GB 260〜380ドル 約4万〜6万円
128GB 520〜765ドル 約8万〜12万円

ゲーミングPCやクリエイター向けPCなど、大容量メモリを必要とするモデルほど、価格への影響が大きくなる構図です。

Lenovo:「どのメーカーも吸収できない」

Lenovoは2026年1月1日をもって、現在の見積価格をすべて無効にすると顧客に通知しました。

同社幹部のMarco Andresen氏は「業界全体で前例のないコスト上昇が発生しており、特にメモリーとSSDの値上がりが顕著だ。このコスト上昇は通常よりもはるかに大きく、どのメーカーも吸収できるレベルではない」と警告しています。

この発言は、値上げがDellやLenovoに限った話ではなく、業界全体の問題であることを示しています。

HP:来年下半期が「特に厳しい」

HPは現時点で具体的な値上げ時期や幅を発表していませんが、来年下半期に向けて特に厳しい状況になるとの見方を示しています。

日本HPは価格に関する回答を控えていますが、「価格や調達に関する関心については把握している」とコメントしており、何らかの対応を検討していることは間違いありません。

次のページでは、なぜこれほどPCが値上がりしているのか、その根本原因と今後の見通しを解説します。