PC値上げ最大30%、販売停止も続出

なぜPCは値上がりしているのか?3つの原因

PC価格高騰の原因は、一言でいえば「AIブームによるメモリ不足」です。具体的には、以下の3つの構造的な問題が重なっています。

原因1:AIデータセンターがメモリを「食い尽くす」

ChatGPTに代表される生成AIの急速な普及により、世界中でAI向けデータセンターの建設が加速しています。Google、Microsoft、Amazon、OpenAIといったテック大手は、AI開発に必要なサーバーを増設するため、メモリを大量に買い付けています。

その結果、PCやスマートフォン向けのメモリは「後回し」にされ、深刻な供給不足が発生しています。業界関係者は「AIデータセンター向けの需要が、従来用途よりも優先される構図になった」と指摘しています。

原因2:メモリメーカーがAI向けに生産シフト

メモリ大手のサムスン電子、SKハイニックス、マイクロンは、利益率の高いAI向けメモリ(HBM)の生産に注力しています。

特に衝撃的だったのは、2025年12月3日のマイクロンの発表です。同社は「AI向けに全面シフトするため」として、一般消費者向けのメモリとNANDストレージから撤退すると発表しました。世界第3位のメモリメーカーが個人向け市場から撤退するという、業界の異常事態を象徴する出来事です。

原因3:駆け込み需要による在庫枯渇

値上げの報道が広まるほど、「今のうちに買っておこう」という駆け込み需要が殺到。その結果、メーカーの在庫が急速に減少し、さらなる品薄と価格高騰を招くという悪循環が生まれています。

マウスコンピューターが「想定を大きく上回る受注」と表現したように、通常の販売ペースをはるかに超える注文が押し寄せ、生産が追いつかない状況に陥っています。

今後の見通し:いつまで続く?

最も気になるのは「この状況はいつまで続くのか」という点でしょう。残念ながら、短期的な解消は見込めません。

2026年前半:さらに深刻化の見通し

メモリメーカーTeamGroupのGerry Chen氏は「2026年前半にはより深刻な事態になる」と警告しています。2025年12月時点でも、一部のDRAM契約価格は前月比で100%(2倍)に上昇しているメーカーがあるとされています。

市場調査会社MM総研は、2026年度(2026年4月〜2027年3月)のPC価格について「さらに10%以上上昇することも想定される」と予測しています。

価格安定は早くとも2027年半ば

複数のアナリストは、メモリ価格が安定するのは早くとも2027年半ばと予測しています。これは、新たなメモリ製造工場が稼働し始めるタイミングと一致します。

半導体工場の建設には通常2〜3年を要するため、現在計画されている増産が効果を発揮するまでには時間がかかります。それまでは「売り手市場」が続く見通しです。

円安の影響で日本は特に厳しい

日本市場には、さらに円安という追い打ちがあります。PCの主要部品は海外から輸入されるため、円安が進むほど調達コストが上昇します。

来年発売される端末は、メモリ高騰と円安のダブルパンチにより、現行モデルに比べて数万円単位で値上げされる可能性も指摘されています。

PC購入の判断ポイント

では、消費者としてはどう判断すればよいのでしょうか。

「必要なら今買う」が正解

現状を踏まえると、PCが必要な方は年内か、遅くとも2026年1月中旬までに購入することをおすすめします。2026年に入ると、各メーカーの値上げが順次実施され、選択肢も狭まる可能性が高いです。

店舗在庫を狙う手も

家電量販店や直販店舗には、値上げ前に仕入れた在庫が残っている場合があります。マウスコンピューター新宿店のように「年内は価格据え置き」としている店舗もあるため、店頭在庫を狙う手もあります。

スペックの妥協も選択肢

メモリ容量が多いモデルほど値上げ幅が大きくなるため、必要十分なスペックで妥協することも一つの選択肢です。例えば、64GBではなく32GBにする、といった判断で数万円の差が生まれます。

まとめ:「買うなら今」は本当だった

マウスコンピューターが発した「買うなら今」という悲鳴は、決して誇張ではありませんでした。

2025年12月現在、PC市場では以下のような異常事態が進行しています。

  • Dell、Lenovo、HPの世界大手3社が揃って値上げを発表
  • マウスコンピューター、サイコムなど国内BTOメーカーが一部製品の販売停止
  • メモリ価格は前月比で最大100%上昇
  • 価格安定は早くとも2027年半ば

PCの買い替えを検討している方は、「もう少し待てば安くなる」という期待は捨てた方がよいでしょう。必要なタイミングで、在庫があるうちに購入することをおすすめします。

新生活に向けてPCを準備する予定の方は、年明けの値上げ前に動くことを強くおすすめします。

▶ 参考資料
・PC Watch「PC買うなら急げ」は本当だった。マウスが一部販売停止&1月値上げを発表
・ITmedia NEWS「PCの価格改定、26年1月以降に──マウスコンピューターが発表」
・PC Watch「PC大手3社が悲鳴、DRAM枯渇で値上げラッシュへ」
・マイナビニュース「パソコン高騰へ、メモリとSSDが枯渇、年内在庫も黄信号?」
・AUTOMATON「メモリ品薄激化でPCメーカーから『想定を上回る注文』の悲鳴続出」