国が年金増額支援してくれる制度10選

「もらえる年金を減らさない」制度2選

年金を「増やす」だけでなく、「減らさない」ことも重要です。働きながら年金を受け取る人や、所得が少ない人を支援する制度を紹介します。

【制度9】在職老齢年金制度の見直し:カット基準が緩和

65歳以上で働きながら年金を受け取る場合、収入が一定額を超えると年金がカット(支給停止)されることをご存知でしょうか。これが「在職老齢年金制度」です。

現行制度では、「年金の基本月額」と「給与・賞与の月額相当」の合計が月51万円を超えると、超えた分の半額が年金からカットされます。

しかし、2026年度からの改正で、この基準が大幅に緩和されます。

項目 現行(2025年度) 改正後(2026年度〜)
支給停止基準額 月51万円 62万円

基準額が11万円引き上げられることで、「働くと年金が減るから」と就労を控えていた高齢者も、より安心して働けるようになります。

具体例

  • 年金月額15万円+給与月額35万円=合計50万円→現行でもカットなし
  • 年金月額20万円+給与月額40万円=合計60万円→現行ではカット、改正後はカットなし

ただし、在職定時改定で年金が増えると、逆にカット対象になる可能性もあります。自分の収入と年金額を把握して、働き方を調整しましょう。

【制度10】年金生活者支援給付金:年間65,400円の上乗せ

低所得の年金受給者には、年金に上乗せして「年金生活者支援給付金」が支給されます。2019年10月にスタートした制度で、消費税率引き上げ分を財源としています。

2025年度の給付金額

  • 老齢年金生活者支援給付金:月5,450円(年間65,400円)
  • 障害年金生活者支援給付金:月5,450円〜6,813円
  • 遺族年金生活者支援給付金:月5,450円

老齢年金生活者支援給付金の対象要件

  1. 65歳以上の老齢年金受給者
  2. 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  3. 前年の公的年金等の収入+その他所得の合計が約89万円以下

年間65,400円は決して大きな金額ではありませんが、年金生活者にとっては貴重な上乗せです。

重要:申請しないと受け取れない

この給付金は、申請しなければ1円も受け取れません。新たに対象になる方には、日本年金機構から9月頃に請求書(はがき型)が届きます。届いたら必ず返送してください。

マイナンバーカードをお持ちの方は、マイナポータルからの電子申請も可能です。条件を満たしている可能性がある方は、お近くの年金事務所に相談してみましょう。

年金が足りない場合の5つの対応策

ここまで10の制度を紹介しましたが、それでも年金だけでは老後資金が足りないケースもあります。最新の試算を確認しておきましょう。

老後資金、実際いくら足りない?

項目 金額
平均生活費 月28.3万円
平均収入(年金含む) 月24.4万円
公的年金のみの場合 月21.8万円
毎月の不足額 約3.8〜6.4万円
30年間の不足総額 約1,365〜2,300万円

「ゆとりある老後」を送るには月36万円が必要とも言われ、その場合の不足額はさらに大きくなります。では、どう対処すればよいのでしょうか。

対応策1:長く働く

最も確実な対策は、できるだけ長く働くことです。在職定時改定で年金が増え、繰下げ受給で増額率も上がります。65歳以降も週3日程度働くだけでも、収入と年金の両面でプラスになります。

対応策2:支出を見直す

収入を増やすだけでなく、支出を減らすことも重要です。特に固定費(通信費・光熱費・保険料)の見直しは効果が大きいです。月3,000円削減できれば、年間36,000円、10年で36万円の節約になります。

対応策3:NISAやiDeCoで資産運用

国が推進するNISAiDeCoを活用して、資産を「増やす」ことも選択肢です。2024年から新NISAがスタートし、年間360万円まで非課税で投資できるようになりました。

対応策4:年金シミュレーションで現状把握

まずは自分がいくら年金を受け取れるのか把握することが大切です。厚生労働省の「公的年金シミュレーター」を使えば、ねんきん定期便のデータから簡単に試算できます。

対応策5:専門家(FP)に相談

年金制度は複雑で、自分に合った対策を見つけるのは簡単ではありません。ファイナンシャルプランナー(FP)に相談すれば、繰下げ受給のタイミングや資産の見直しなど、具体的なアドバイスを受けられます。

まとめ:制度を知っているかどうかで老後が変わる

この記事では、国が支援してくれる年金増額制度を10個紹介しました。

# 制度名 ポイント
1 繰下げ受給 最大84%増
2 付加年金 2年で元が取れる
3 国民年金基金 掛金全額所得控除
4 iDeCo 3段階の税制優遇
5 追納制度 過去の空白を埋める
6 任意加入制度 60〜65歳で年金回復
7 厚生年金加入拡大 パートも対象に
8 在職定時改定 毎年10月に反映
9 在職老齢年金見直し カット基準62万円へ緩和
10 年金生活者支援給付金 年間65,400円(要申請)

これらの制度は、知っているかどうかで活用できるかが決まります。「知らなかった」では済まされない金額の差が生まれることもあります。

まずは公的年金シミュレーターで自分の年金額を確認し、どの制度が使えるかチェックしてみてください。40代、50代のうちから準備を始めれば、老後の選択肢は大きく広がります。

年金は「もらうもの」ではなく、「増やすもの」。国が用意した制度を賢く活用して、安心できる老後を手に入れましょう。

▶ 参考資料
・厚生労働省「年金制度改正法」
・厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
・厚生労働省「iDeCoの概要」
・厚生労働省「在職老齢年金制度の見直し」
・厚生労働省「公的年金シミュレーター」
・全国国民年金基金
・生命保険文化センター「老齢年金の繰上げ・繰下げ受給」