年金受給60歳と75歳どっちがお得?

【シミュレーション】何歳まで生きたら得?損益分岐点を徹底検証

繰上げ・繰下げ受給のどちらが得かは、「何歳まで生きるか」によって決まります。年金の総受給額が逆転するポイント、いわゆる「損益分岐点」を具体的に見ていきましょう。

繰上げ受給の損益分岐点

60歳から繰上げ受給した場合、65歳から受け取る場合と比べて年金総額はいつ逆転するのでしょうか。

受給開始年齢 減額率 損益分岐点
60歳 -24% 80歳10カ月
61歳 -19.2% 81歳2カ月
62歳 -14.4% 81歳6カ月
63歳 -9.6% 81歳10カ月
64歳 -4.8% 82歳2カ月

60歳から繰上げ受給した場合、80歳10カ月より長生きすると65歳受給より総額で損をします。つまり、80歳10カ月までに亡くなれば繰上げが有利、それ以上生きれば65歳受給が有利ということです。

繰下げ受給の損益分岐点

繰下げ受給の場合はどうでしょうか。

受給開始年齢 増額率 損益分岐点
66歳 +8.4% 78歳
68歳 +25.2% 80歳
70歳 +42% 81歳11カ月
75歳 +84% 86歳11カ月

70歳まで繰り下げた場合は81歳11カ月、75歳まで繰り下げた場合は86歳11カ月より長生きすれば、65歳受給より総額で得になります。

平均寿命から考える「どっちがお得?」

厚生労働省「令和5年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は以下の通りです。

性別 平均寿命 65歳時点の平均余命
男性 81.09年 19.52年(→84歳)
女性 87.14年 24.38年(→89歳)

注目すべきは「65歳時点の平均余命」です。65歳まで生きた人は、平均で男性は84歳、女性は89歳まで生きるというデータがあります。

60歳繰上げの損益分岐点(80歳10カ月)まで生きる確率は、男性で66.2%、女性で83.6%です。つまり、3人に2人以上が繰上げ受給で損をする計算になります。

一方、75歳繰下げの損益分岐点(86歳11カ月)を考えると、女性の平均寿命(87.14歳)がちょうどこのラインを超えています。女性は繰下げ受給が有利になりやすいと言えるでしょう。

繰上げ受給(60歳〜)のメリット・デメリット

損益分岐点だけで判断できないのが年金受給の難しいところです。繰上げ受給には、金額以外にも重要なメリット・デメリットがあります。

繰上げ受給のメリット

1. 早期に年金を受け取れる

60歳で定年退職した後、65歳までの5年間は「年金空白期間」になります。この期間の生活費を繰上げ受給でカバーできます。

2. 健康なうちにお金を使える

「元気なうちに旅行や趣味を楽しみたい」という人には、早期受給にメリットがあります。80歳を過ぎると、お金があっても使う機会が減るという考え方もあります。

3. 貯蓄の取り崩しを抑えられる

60〜65歳の間に貯蓄を大きく取り崩すことへの不安を軽減できます。

繰上げ受給のデメリット(要注意)

1. 減額が一生続く

一度繰上げを選択すると、その減額率は生涯変わりません。取り消しも不可能です。

2. 障害年金が受け取れなくなる

繰上げ受給後に障害状態になっても、「事後重症」による障害年金を請求できなくなります。障害基礎年金は1級で約104万円、2級で約83万円(令和7年度)と、老齢基礎年金の満額と同等かそれ以上の金額です。持病がある方は特に注意が必要です。

3. 遺族年金との併給制限

繰上げ受給中に配偶者が亡くなった場合、65歳までは繰上げた老齢年金と遺族厚生年金の両方を受け取ることができません。どちらか一方を選択する必要があります。

4. 寡婦年金を受け取れなくなる

国民年金第1号被保険者の夫が亡くなった場合、妻は60〜65歳の間「寡婦年金」を受け取れますが、繰上げ受給するとこの権利を失います。

5. 国民年金の任意加入・追納ができなくなる

60歳以降に国民年金に任意加入して年金額を増やしたり、過去の免除期間を追納したりすることができなくなります。

6. 失業保険との調整

雇用保険の基本手当(失業保険)を受給する場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になります。

繰上げ受給が向いている人

以下のような方は、繰上げ受給を検討する価値があります。

  • 健康上の不安があり、長生きできないと感じている人
  • 60〜65歳の間の収入が少なく、生活費が足りない人
  • 十分な貯蓄があり、減額されても生活に困らない人
  • 「今を楽しむ」ことを優先したい人