「残業しているのに残業代が出ない」「固定残業代と言われて終わり」「タイムカードがないから証拠がない」など、未払い残業代の悩みは珍しくありません。ポイントは、感情で揉める前に、事実と証拠をそろえて手順を踏むことです。ここでは、個人で進めやすい現実的な流れに絞って解説します。

残業代が発生する基本ルール

割増賃金が必要なケース

法定労働時間(原則として1日8時間・週40時間)を超える時間外労働や、法定休日の労働、深夜(午後10時〜午前5時)の労働には、割増賃金が必要です。会社が「みなし」「うちは出ない」と言っても、要件を満たす限りゼロにはできません。まずは、自分の残業がどの区分に当たるか(時間外、休日、深夜)を切り分けて把握してください。

時効があるので放置は不利

未払い賃金には時効があります。賃金請求権は法改正で延長されましたが、当分の間は3年とされています。請求できる期間が限られるため、放置するほど取り戻せる範囲が狭くなります。「辞めてから考える」より、在職中から証拠を集めておく方が有利です。

最優先は証拠集め

労働時間を示す証拠の例

未払い残業代は「どれだけ働いたか」を示せるかが勝負です。会社の打刻だけが証拠ではありません。日常のデータを組み合わせることで、労働時間の推認ができる場合があります。証拠は、できるだけ改ざんされにくい形で保存し、日付順に整理しましょう。

  • タイムカード、勤怠システムの記録、シフト表
  • 入退館記録、PCログオン・ログオフ記録、業務端末の履歴
  • 業務メール、チャット、電話履歴、作業報告
  • 業務日報、手帳メモ(毎日継続していると強い)
  • 給与明細、雇用契約書、就業規則、固定残業代の説明資料

残業代の計算のしかた

計算の全体像をつかむ

ざっくり言えば「1時間あたり賃金×割増率×残業時間」です。時間外は25%以上、休日は35%以上、深夜は25%以上が基本で、条件が重なると上乗せになります。また、割増賃金の算定から除外できる手当は限定列挙で、名称ではなく実質で判断されます。計算は複雑になりやすいので、まずは月ごとの残業時間と、基礎時給の作り方を押さえてください。

60時間超の割増率にも注意

月60時間を超える時間外労働は割増率が引き上がります。中小企業向けの猶予措置は2023年4月1日に廃止されています。長時間残業がある場合は、ここを落とすと金額差が大きくなります。

請求は段階的に進める

会社への伝え方は書面が安全

いきなり強い言葉で交渉すると関係がこじれやすいので、まずは事実ベースで整理し「いつからいつまで」「何時間」「概算いくら」を示して支払いを求めます。口頭だけだと後で争いになるため、メールなど記録が残る形がおすすめです。会社が調査すると言った場合も、期限を区切って回答を求めると進みやすくなります。

外部の相談先を使う

話が進まない場合は、労働基準監督署への相談や、都道府県労働局の総合労働相談コーナー(あっせん等)を利用する方法があります。状況によっては弁護士への相談、裁判手続(少額訴訟や支払督促など)も選択肢になります。どのルートがよいかは、金額、証拠の強さ、在職か退職後かで変わります。

※本記事は一般情報です。実際の請求は、雇用形態や管理職扱い、固定残業代の設計などで結論が変わります。迷う場合は、公的窓口や専門家に相談してください。

出典

出典:厚生労働省(時間外・休日労働と割増賃金)厚生労働省(賃金請求権の消滅時効Q&A)厚生労働省(個別労働紛争解決制度)青森労働局(60時間超割増の猶予廃止)