離婚後の生活を考えるとき、年金分割は老後資金の見通しに関わる重要な手続きです。ただ、年金分割は「離婚したら自動で反映される」ものではなく、期限内に必要書類をそろえて請求しないと成立しません。ここでは、離婚後に何から確認し、どこでつまずきやすいのかを、初めての方でも手順がイメージできるように整理します。

年金分割は手続きしないと反映されない

年金分割は、請求してはじめて将来の年金計算に反映されます。

大前提として押さえたいのは、年金分割は「将来の年金を毎月分けてもらう」仕組みではなく、婚姻期間中の厚生年金の記録(標準報酬など)を分け直す制度だという点です。離婚届を出しただけでは記録は変わりません。離婚後に、年金事務所で所定の請求を行い、条件を満たして初めて反映されます。

また、年金分割はお金のやり取りを直接決めるものではないため、離婚協議書に「年金分割する」と書いてあっても、それだけで完了にはなりません。協議書は合意内容の根拠として重要ですが、最後は年金事務所での請求が必要です。

まず確認すべきは対象となる年金と分割の種類

対象と種類を整理すると、無駄なやり直しを減らせます。

分割の対象は主に厚生年金の記録

年金分割の対象は、原則として厚生年金の記録です。国民年金(基礎年金)の部分をそのまま半分にする制度ではありません。どこが対象で、どこが対象外になりやすいのかを最初に理解しておくと、期待と現実のズレが小さくなります。

合意分割と3号分割で進め方が変わる

年金分割には、当事者が割合を決める「合意分割」と、一定の要件を満たす期間について原則として2分の1で分ける「3号分割」があります。どちらに当てはまるかで、必要な書類や合意の要否が変わります。離婚後に慌てないためにも、まずは自分がどちらの枠組みで進めるのかを確認しましょう。

離婚後に優先してやるべきは情報の入手と期限の確認

先に「情報」と「期限」を固めると、交渉や書類準備が現実的になります。

年金分割のための情報通知書を取って内容を把握する

合意分割で割合を決めるには、対象となる婚姻期間や、その期間の標準報酬などの情報を把握する必要があります。そのために用意されているのが「年金分割のための情報通知書」です。情報通知書の請求は離婚前でも離婚後でも可能ですが、請求のタイミングが遅いと全体の段取りが詰まりやすくなります。

情報通知書を見ずに「きっと半分」と決め打ちで進めると、対象期間の考え違いなどが起きやすく、後から修正が必要になることがあります。まずは情報を取り、対象期間がどの月からどの月までになっているかを確認しましょう。

請求の期限を先にカレンダーに落とし込む

年金分割の請求には期限があります。原則として、離婚等が成立した日の翌日から起算して2年以内に請求しないと手続きができません。離婚後は住所変更、氏の変更、仕事や生活の立て直しなどで手続きが後回しになりがちです。だからこそ、離婚が成立した時点で、期限を先にカレンダーに入れておくことが重要です。

なお、裁判手続きで按分割合が定められた場合など、例外的な扱いが問題になることもあります。自分の状況が一般的な流れから外れそうだと感じたら、早めに年金事務所で確認しておくと安心です。

元配偶者と連絡が取れない場合でも進められることがある

相手の協力が得られないときほど、できることから着手するのが大切です。

離婚後、元配偶者と連絡がつかない、話し合いが難しい、という状況は珍しくありません。その場合でも、情報通知書の請求自体は当事者の一方から行えるケースがあります。まずは情報を入手し、対象期間や記録の範囲を把握したうえで、次に何が必要かを整理すると、無駄な消耗が減ります。

また、合意ができない場合は、家庭裁判所の調停などの枠組みで按分割合を定めることを検討する流れになります。年金分割は「話し合いができない=終わり」ではなく、状況に応じて手続きの道筋が用意されています。

離婚後に起きやすい手続きミスを避けるコツ

よくある落とし穴を先に知っておくと、取り返しのつかないミスを防げます。

情報通知書を取っただけで安心しない

情報通知書は「合意分割に必要な情報」を確認するためのものです。情報通知書を受け取っただけでは年金は分割されません。実際に分割を反映させるには、離婚後に「標準報酬改定請求」など所定の請求手続きを行う必要があります。次のステップが残っている点を忘れないようにしましょう。

氏名や住所の変更で書類が噛み合わなくなる

離婚後は氏名や住所が変わることがあります。本人確認書類や戸籍謄本などの記載と、請求書の記載が一致しないと、追加の確認が必要になることがあります。変更がある場合は、どの書類の記載が最新か、提出時点で整合が取れているかを意識するとスムーズです。

離婚給付や財産分与と混同しない

離婚後のお金の話には、財産分与、慰謝料、養育費など複数の論点があります。年金分割は公的年金の記録を分け直す制度であり、これらとは別の枠組みです。交渉の場面では話題が混ざりやすいので、「年金分割は年金分割として、期限と手続きがある」と切り分けて管理すると混乱しにくくなります。

年金事務所で確認しておくと安心なポイント

不安が残る部分は、窓口で要点を確認すると判断がしやすくなります。

  • 自分のケースが合意分割と3号分割のどちらに該当しやすいか
  • 対象となる婚姻期間の考え方と、情報通知書に載る情報の見方
  • 請求期限の起算点が自分のケースでいつになるか
  • 手続きに必要な書類の種類と、提出時の注意点

「何を聞けばいいか分からない」と感じるときは、まずは情報通知書の請求に必要な書類と、その後の請求に必要な書類の違いを確認するところから始めると、全体の流れがつかみやすくなります。

出典:日本年金機構(離婚時の年金分割)

出典:日本年金機構(離婚時の厚生年金の分割:合意分割制度)

出典:日本年金機構(離婚時に年金分割をするとき)